研究プロジェクト

本センターでは、3つの研究プロジェクトを設置し、研究プロジェクトを実施しています。
研究プロジェクトは以下の3つです。

01方言比較による
言語伝播メカニズムの解明

どの言語も、決して均質な一枚岩ではなく、時空間において多様な変異を有している。本プロジェクトは、言語(方言)の接触と変容に係わる諸問題 ── 中心言語が如何に周辺言語に伝播し、また周辺言語は如何に中心言語を受容するのか ── を解明することを目的とする。具体的には、日本および中国の諸地域や民族に帰属する多様な言語資源(音声・語彙・文法・談話など)および種々の文化事項(舞台・家屋・服飾など)について調査し、その記録・保存のための情報化を図る。

02「語」の概念の普遍性と
言語タイプによる個別性の解明

地球上には、6千以上の言語が生存していると言われているが、どの言語にも「語」(一般には「単語」と呼ばれる)という塊りがある。「語」の姿が言語によって千差万別であることも言語生態的特徴の1つとして挙げられる。「語」は言語を構成する基本単位であるが、語をどのように規定するかという問題は、伝統的な言語類型による言語タイプ(ヨーロッパ言語等の屈折型、中国語等の孤立型、日本語等の膠着型、アメリカインディアン諸語の複統合型)と深く関係し、いまだ解決されていない難問である。本プロジェクトでは、日本語、中国語、英語その他のヨーロッパ言語、アメリカインディアン言語(スライアモン語)を各言語タイプの代表として取り上げ、さらに日本語と姉妹関係にあるが重要な点で相違を見せる琉球語を加えることで、人間言語における「語」の性質を総合的に解明する。

03データサイエンスに基づく
言語生態の計量的解明

本プロジェクトは、伝統的な言語学で充分に議論されてこなかった自然言語の諸現象に関して、データサイエンスや認知科学の手法を取り入れることにより、新たな知見を得るとともに、データ収集から分析に至るまでの方法論の確立をめざす。現象が多様であるため、本プロジェクトの内部は幾つかの班(「文体研究班」「会話研究班」「未解読文献言語研究班」)に分かれる。
文体研究では「文体」に関する研究を行い、統計的方法や機械学習などの最先端の手法を使って、文体の変化構造をモデリングし、近未来の文体の変化の行方を予測することを目指す。会話研究では、文学作品の中の会話文と日常の会話文(方言を含む)のコーパスを利用し、会話文の時空間的特徴や関連性を分析するとともに、統計的モデリングの手法を用いて日本方言の系統モデル、会話文のトレンドなどの諸問題の解明を目指す。また、会話参与者の心理的特性とコミュニケーション方略の関連を明らかにするための会話実験、言いよどみ(フィラー)や相づちのイントネーション・長さと意味の関連を明らかにするための心理実験を行う。未解読文献言語研究では、未解読文献言語の歴史的な解明を目指す。チベット・ビルマ語族の中で消滅の危機に瀕している語群の調査を行い、古い言語特徴を抽出する。調査結果をデータサイエンスの手法を用いて分析し、未解読文献言語の解明や言語間の系統関係の推定等の歴史言語学の方法論を拡充する。